卵は1日1個まで? 今も制限する科学的根拠があるのか調べた

生活・健康

「卵はコレステロールが多いから、1日1個までにした方がいい」

以前からよく聞く話です。

では、今でも卵は1日1個までに制限した方がいいのでしょうか。

結論から言うと、健康な一般成人について、卵を一律に「1日1個まで」とする明確な科学的根拠は現在は乏しいです。

日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、循環器疾患を予防する目的で、食事から摂るコレステロールに一律の目標量は設定されていません。

ただし、

「1日1個という上限に根拠が乏しい」ことと、「卵なら何個食べても問題ない」ことは別です。

1日2〜3個以上を長期間食べ続けた場合については、1日1個程度までと比べるとデータが限られています。

つまり、

健康な人が「1日1個」を絶対的な境界として気にする必要は薄い。ただし、高摂取を長期間続けても問題ないとまでは分かっていない。

現在の研究からは、このくらいに考えるのが妥当です。

卵は本当に「1日1個まで」にする必要がある?

現在の日本の基準では、健康な一般成人に対して「卵は1日1個まで」という上限は設定されていません。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食事から摂るコレステロールと循環器疾患の発症率・死亡率との関係について、研究結果が一貫していないと整理されています。

また、介入研究でも、

「この量を超えると急に危険になる」という明確な境界は確認されていません。

そのため、循環器疾患を予防する目的での食事性コレステロールの目標量は設定されていません。

ただし、

上限が設定されていないからといって、「いくら摂ってもよい」という意味ではありません。

今の位置づけは、

「1日1個」という固定された上限を支持する根拠は乏しいが、無制限に食べてよいと分かったわけでもない

というものです。

なぜ昔は「1日1個まで」と言われていた?

卵黄にはコレステロールが多く含まれています。

以前は、日本を含む各国の食事指針でも、食事から摂るコレステロールに上限が設けられていました。

そのため、コレステロールを多く含む卵も「食べすぎない方がよい食品」として扱われやすく、「1日1個まで」という考え方が広まりました。

その後、研究が増えるにつれて、

  • 食事から摂るコレステロール量
  • 血中のLDLコレステロール
  • 心筋梗塞や脳卒中などの発症

を単純に一本の線で結ぶことはできないことが分かってきました。

食事性コレステロールを増やせば血中脂質に変化が出ることはあります。

しかし、

「1個までは安全、2個から危険」という境界が確認されているわけではありません。

そのため、「1日1個」という数字を絶対的な上限として扱う根拠は以前より弱くなっています。

1日1個程度なら心血管疾患のリスクは上がる?

2020年にBMJへ掲載された大規模研究では、米国の3つの前向きコホートに加えて、それまでの研究をまとめたメタ解析も行われました。

約172万人、約13万9,000件の心血管疾患イベントを含む解析では、卵を1日1個多く食べることと、心血管疾患リスクの明確な増加は確認されませんでした。

全体の相対リスクは0.98で、95%信頼区間は0.93〜1.03でした。

つまり、

少なくとも1日1個程度までの範囲では、卵を食べるほど心血管疾患が増えるという明確な関係は確認されていません。

ただし、この研究にも重要な限界があります。

参加者の多くは週1〜5個未満程度の摂取で、毎日何個も食べる人のデータは多くありませんでした。

研究者も結論を「中程度の摂取、最大で1日1個程度」の範囲として述べています。

そのため、

「1日1個程度で明確なリスク増加が確認されなかった」ことを、「何個食べてもリスクは変わらない」と読み替えることはできません。

「1個」と「2個」の間に危険な境界はある?

ここは「1日1個まで」という話を考えるうえで重要です。

現在の研究では、

1個から2個になったところで急に健康リスクが上がる、という境界は確認されていません。

「1日1個」は、研究で摂取量を分類するときや、食事の目安として使われることがあります。

しかし、

「1個までは安全、2個から危険」という生物学的な境界として確認された数字ではありません。

2025年のアンブレラレビューでも、卵摂取と心血管疾患全体・総死亡との明確な関連は確認されませんでした。

一方で、研究ごとの結果にはばらつきがあり、エビデンス全体の強さは低いと評価されています。

つまり、

「1日1個」という線を絶対視する理由は乏しい一方、別の明確な安全上限が見つかったわけでもありません。

では、毎日2〜3個食べても大丈夫?

ここは、1日1個程度までの話とは分けて考える必要があります。

2020年に17件のランダム化比較試験をまとめたメタ解析では、卵を多く食べたグループで、対照群よりLDLコレステロールが平均約8mg/dL高くなりました。

HDLコレステロールにも変化が出るため、LDLだけで健康影響を判断することはできません。

ただ、

「卵を増やしても血中脂質には何の影響もない」とは言えません。

2025年のアンブレラレビューでも、介入研究では卵摂取量が多い条件でLDLコレステロールが平均的に高くなる傾向が確認されています。

ただし、ここで調べられているのは主に短期間の血中脂質です。

これは、

「何年も毎日2〜3個食べ続けると、心筋梗塞や脳卒中が増えるのか」

という問いとは別です。

2〜3個/日を使った介入試験もありますが、多くは数週間から数カ月程度です。

そのため、現在の研究から言えるのは、

「1個を超えたら危険」という明確な根拠はない一方で、「毎日2〜3個を長期間食べても問題ない」と確認されているわけでもありません。

高摂取になるほど、分かっている範囲が狭くなると考えた方が分かりやすいです。

LDLコレステロールが高い人は話が別

ここまでの話は、主に健康な一般成人についてです。

すでにLDLコレステロールが高い人では、同じようには考えません。

日本動脈硬化学会は、高LDLコレステロール血症の人について、LDLコレステロールを下げる目的で食事性コレステロールを200mg/日未満にすることを推奨しています。

日本人の食事摂取基準(2025年版)でも、脂質異常症の重症化予防では、コレステロールを200mg/日未満に留めることが望ましいとされています。

つまり、

「健康な一般成人には一律の上限がない」ことと、「LDLが高い人も同じように考えてよい」ことは別です。

糖尿病についても、一部の観察研究では卵摂取量が多い人で心血管疾患リスクが高かったという結果がありますが、研究結果は一貫していません。

American Heart Associationも、卵だけを単独で制限するより、飽和脂肪酸を抑えることや食事パターン全体を重視しています。

卵だけを見るのではなく、健康状態と食事全体で考える必要があります。

結局、卵は1日1個までなの?

健康な一般成人について、卵を「1日1個まで」に制限しなければならないという明確な科学的根拠は、現在は乏しいです。

日本の現行基準では、循環器疾患予防を目的とした食事性コレステロールの一律の目標量は設定されていません。

大規模な観察研究でも、1日1個程度までの卵摂取と心血管疾患リスクの明確な増加は確認されていません。

そして、

「1個までは安全、2個から危険」という境界も確認されていません。

なので、健康な人が「今日は卵を2個食べたから危険だ」と、1個という数字を絶対的な境界として考える必要は薄いです。

ただし、

「毎日2〜3個でも長期的に問題ない」「何個食べても問題ない」とまでは分かっていません。

高摂取を長期間続けた場合のデータは、1日1個程度までと比べると限られています。

また、卵を多く食べる短期試験ではLDLコレステロールが上がる結果もあります。

結局のところ、

健康な一般成人なら「卵は絶対に1日1個まで」と考える必要はない。ただし、数を無制限に増やしてよいと分かったわけでもない。

このくらいが、現在の研究から最も言いやすい結論です。

高LDLコレステロール血症などがある場合は、健康な一般成人向けの話をそのまま当てはめず、別に考える必要があります。

参考資料

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • 日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」
  • Drouin-Chartier J, et al. Egg consumption and risk of cardiovascular disease: three large prospective US cohort studies, systematic review, and updated meta-analysis. BMJ. 2020;368:m513. DOI: 10.1136/bmj.m513.
  • Li MY, et al. Association between Egg Consumption and Cholesterol Concentration: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Nutrients. 2020;12:1995. DOI: 10.3390/nu12071995.
  • Carson JAS, et al. Dietary Cholesterol and Cardiovascular Risk: A Science Advisory From the American Heart Association. Circulation. 2020;141:e39–e53. DOI: 10.1161/CIR.0000000000000743.
  • Formisano E, et al. Effect of egg consumption on health outcomes: An updated umbrella review of systematic reviews and meta-analysis of observational and intervention studies. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2025;35(5):103849. DOI: 10.1016/j.numecd.2025.103849.

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