クエン酸は疲労回復に効く? 疲労感と身体の回復を分けて調べた

生活・健康

「疲れたときはクエン酸」と聞くことがあります。

では、クエン酸を摂ると本当に身体の回復が速くなるのでしょうか。

調べてみると、「主観的な疲労感」と「客観的な身体の回復」は分けて考える必要があります。

クエン酸で運動後の主観的な疲労感が軽くなったヒト試験はあります。一方、その研究では運動能力や複数の血液検査値まで明確に改善したわけではありません。

つまり現時点では、クエン酸で運動後の主観的な疲労感が軽くなる可能性を示す証拠はありますが、「身体の疲労回復そのものが速くなる」とまでは言えません。

クエン酸で「疲労感」が軽くなった研究はある

18人の試験では運動後の疲労感が低かった

2007年の研究では、健康な成人18人が、クエン酸2,700mg/日、L-カルニチン1,000mg/日、プラセボをそれぞれ8日間摂取する二重盲検・プラセボ対照のクロスオーバー試験に参加しました。

その後、自転車エルゴメーターを使った2時間の運動を2回、合計4時間行っています。

運動終了時に本人が感じる疲労を0〜100の尺度で評価したところ、プラセボは74.6、クエン酸は60.6でした。クエン酸群の方が14ポイント低く、この差は統計的にも有意でした(p<0.01)。

この結果から、「クエン酸を摂取した条件で、長時間の運動後に本人が感じる主観的な疲労が軽かったヒト試験はある」とは言えます。

ただし、小規模な1研究だけで効果が確立したとは言えない

この試験は18人と小規模で、条件も「クエン酸を2,700mg/日、8日間摂取した後に長時間運動を行う」という限定されたものです。

そのため、この研究だけから「クエン酸を飲めば誰でも疲れにくくなる」と一般化することはできません。

2,700mgという量も「この量以上なら効く」という境界ではなく、2,700mg/日を8日間摂取した条件で主観的な疲労感の差が確認されたという研究結果です。

主観的な疲労感が軽くなっても、身体の回復が速いとは限らない

同じ研究では、主観的な疲労感だけでなく、CPK、AST、LDH、血中乳酸、心拍数、10秒間の最大ペダリング速度といった客観的な指標も測定されています。

CPK、AST、LDH、血中乳酸にはクエン酸群とプラセボ群で有意な差がなく、10秒間の最大ペダリング速度にも有意差は確認されませんでした。

つまり、「主観的な疲労感は軽かった」一方で、「客観的に測定した身体パフォーマンスや複数の生化学指標まで改善したわけではなかった」という結果です。

ただし、「クエン酸には身体的な回復効果がないことが証明された」と読むことはできません。

この研究で測定していない回復指標まで否定できるわけではなく、筋力の翌日回復や炎症、筋肉痛などを幅広く検証した大規模研究でもありません。

現在確認できた範囲では、身体の回復そのものが速くなることを示す十分な証拠はありません。

「主観的な疲労感」と「身体の回復」は分けて考える必要がある

本人が「楽になった」と感じることは、主観的な疲労感の改善です。

一方、筋力や持久力が戻る、筋損傷が修復される、翌日の運動能力が回復するといった変化は、身体の回復です。

主観的な疲労感が軽くなっただけでは、身体そのものの回復まで速くなったとは判断できません。

クエン酸については、この2つをまとめて「疲労回復効果」と扱わない方が、現在の証拠に合っています。

「乳酸を減らすから疲労回復する」という説明は正しいのか

現在の運動生理学では、乳酸は単なる不要な老廃物とは考えられていません。

乳酸は運動中にも作られますが、別の組織へ運ばれてエネルギー源として使われたり、代謝の中で再利用されたりします。

そのため、「乳酸がたまる=疲れる」「乳酸を減らせば疲労が回復する」という単純な図式では説明できません。

先ほどのクエン酸試験でも、クエン酸群とプラセボ群の血中乳酸値に有意差はありませんでした。それにもかかわらず、主観的な疲労感には差が出ています。

少なくともこの結果は、「クエン酸で乳酸が減ったから、疲労感も減った」という単純な説明とは一致しません。

乳酸は体内で別の物質に変換され、エネルギー代謝の中で利用されます。クエン酸そのものが乳酸を直接「分解して消す」わけではありません。

したがって、「クエン酸が乳酸を分解するから疲労回復する」と説明するのは適切ではありません。

結局、疲れたときにクエン酸を飲む意味はあるのか

小規模ながら、運動後の主観的な疲労感が軽かったヒト試験はあります。ただし、実生活でよく想定する使い方とは少し違います。

1回飲めばすぐ回復するという証拠は確認できていない

中心となる研究では、クエン酸を8日間継続して摂取しています。

つまり、

「今日疲れた」
↓
「クエン酸を1回飲む」
↓
「すぐ疲れが回復する」

という使い方を直接検証した研究ではありません。

疲れた後にクエン酸を1回飲めば、すぐ疲労が回復すると判断できる証拠は今回確認できていません。

これは「1回では絶対に効かない」という意味ではなく、研究が直接示している範囲がそこまでではないという意味です。

運動以外の仕事疲れや寝不足にもそのまま広げられない

今回確認したヒト試験は、長時間の運動によって起こした身体的な疲労を対象にしています。

そのため、仕事で頭が疲れた、寝不足でだるい、精神的に疲れた、何週間も疲労感が続いている、といった状態に同じ結果をそのまま当てはめることはできません。

現在確認できている証拠は主に運動による疲労についてのもので、日常の疲労全般に効くとまでは言えません。

疲労が強い、長期間続く、原因が分からない場合は、単にクエン酸で対処する問題とは限りません。

結局どうなの?

クエン酸で運動後の主観的な疲労感が軽くなったヒト試験はあります。ただし、それを「身体の疲労回復そのものが速くなる」とまでは言えません。

確認できた小規模試験では、クエン酸を2,700mg/日、8日間摂取した人で、長時間運動後の主観的な疲労感がプラセボより低くなりました。一方、同じ試験では血中乳酸、CPK、AST、LDH、短時間の最大運動パフォーマンスなどに明確な改善は確認されていません。

また、「乳酸を分解するから疲労回復する」という説明も支持しにくく、疲れた後に1回飲めばすぐ効くという使い方も、今回確認した研究からは裏付けられません。

「疲労回復」という一言でまとめず、主観的に疲れをどう感じるかと身体がどこまで回復したかを分けて考えることが重要です。

参考資料

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