寝る前に牛乳を飲むと、寝付きや睡眠の質は良くなるのでしょうか。
結論からいうと、普通の牛乳を寝る前に飲んで主観的な睡眠が改善した研究はありますが、「牛乳そのものに明確な睡眠改善効果がある」と言えるほど強い証拠はまだありません。
特に、健康な一般成人で寝付きや睡眠時間まで改善するかは十分に分かっていません。
寝る前の普通の牛乳で、実際に睡眠は良くなった?
普通の牛乳を寝る前に飲ませた直接研究は多くありません。
今回確認した中で最も直接的なのは、原発性不眠のある成人に全脂肪乳200mLを就寝前に6週間飲んでもらった2024年の研究です。
牛乳を飲んだグループでは、主観的な睡眠の質を測るPSQIが改善しました。
一方、総睡眠時間、睡眠効率、入眠までの時間などの客観的な指標では、牛乳による明確な改善効果は確立できませんでした。
この研究は各グループ7人と非常に小規模で、参加者自身がグループを選ぶ非無作為化研究でした。介入前から睡眠状態にも大きな差があり、結果をそのまま一般化するのは難しい研究です。
1980年の16人を対象とした試験でも、牛乳単独による総睡眠時間の明確な改善は確認されませんでした。
つまり現時点では、寝る前の普通の牛乳で主観的な睡眠が良くなる可能性はありますが、寝付き、睡眠時間、睡眠効率まで改善するとまでは言えません。
乳製品の研究で効果が出ていても、普通の牛乳に当てはまる?
2025年の系統的レビュー・メタ解析では、乳製品を使った介入によってPSQIが改善する結果が報告されています。
ただし、含まれていたのは普通の牛乳だけではありません。
- 発酵乳
- ヨーグルト
- 夜間に搾乳した牛乳
- 栄養成分を加えた牛乳
- ホエイ蛋白などを含む製品
など、性質の異なる介入が含まれています。
そのため、「乳製品を使った介入で睡眠が改善する可能性がある」という結果を、「普通の牛乳を寝る前に飲めば眠りやすくなる」とそのまま置き換えることはできません。
牛乳のトリプトファンで眠くなる、という説明は本当?
牛乳と睡眠の話では、
トリプトファン → セロトニン → メラトニン
という説明がよく使われます。
ただし、牛乳にトリプトファンが含まれていることと、普通の量の牛乳で睡眠が改善することは別です。
普通牛乳には100gあたり約46mg、200gなら約92mgのトリプトファンが含まれています。
一方、トリプトファン単独の研究をまとめたメタ解析では、特に1g以上の摂取で睡眠改善がみられる傾向が報告されています。牛乳200gの約92mgとは大きな差があります。
さらに、トリプトファンは脳へ取り込まれる際に他の大型中性アミノ酸と競合します。そのため、含有量だけを見て「牛乳を飲めばメラトニンが増えて眠れる」とは言えません。
ただし、サプリメントとして単独摂取したトリプトファンと食品としての牛乳は条件が違うため、「量が少ないから牛乳は効かない」とも断定できません。
現時点では、牛乳にトリプトファンが含まれていることだけでは、牛乳1杯の睡眠改善効果を説明できないと考えるのが妥当です。
ホットミルクにすると、普通の牛乳より眠りやすくなる?
「寝る前にはホットミルクが良い」と言われますが、温めること自体の効果もはっきりしていません。
よく引用される1970年代の研究の一部で使われていたのは、普通のホットミルクではなく、Horlicksという麦芽飲料を加えた牛乳でした。
そのため、
- 牛乳
- Horlicks
- 温かさ
のどれが影響したのか分けられません。
さらに今回確認した範囲では、同じ普通の牛乳を温かい状態と冷たい状態で比較した質の高い研究は確認できませんでした。
したがって現時点では、ホットミルクの方が冷たい牛乳より眠りやすくなるとは言えません。
温かい飲み物でリラックスすると感じることはあっても、それは牛乳を温めることで睡眠が改善する直接的な証拠ではありません。
結局、寝る前に牛乳を飲むと眠りやすくなる?
現時点では、寝る前に普通の牛乳を飲むことで、寝付きや睡眠の質が明確に改善するとは言えません。
普通の牛乳200mLを就寝前に飲んで主観的な睡眠が改善した研究はありますが、小規模・非無作為化で、入眠時間や睡眠時間などの客観的指標について牛乳固有の効果は確立していません。
乳製品全体では肯定的な研究もありますが、特殊な牛乳や発酵乳などが含まれているため、普通の牛乳にはそのまま当てはめられません。
また、ホットにする追加効果や、「牛乳のトリプトファンによって眠れる」という説明も、普通の牛乳1杯について直接確認されたものではありません。
そのため、寝る前の牛乳を効果が確立した睡眠改善法として積極的に取り入れる根拠は、現時点では弱いと考えるのが妥当です。
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