暗い部屋で本やスマホを見ると近視になる? 目の疲れとの違いを調べた

生活・健康

「暗いところで本を読むと目が悪くなる」「暗い部屋でスマホを見るのは目によくない」と言われることがあります。

実際、暗い場所で画面を見続けると、目が疲れたり、見えにくく感じたりすることはあります。しかし、それと「近視が進むこと」は同じなのでしょうか。

現在の研究を整理すると、暗い部屋で本やスマホを見ること自体が近視を引き起こすという因果関係については、直接的な証拠がまだ十分ではありません。一方、照明条件や画面との明るさの差によって、視覚的な疲労や見づらさが変わることは実験研究でも確認されています。

「目が疲れること」と「近視になること」を分けて見ていきます。

暗い部屋で見ると「目が悪くなる」とはどういうことか

目の疲れと近視は同じではない

「目が悪くなる」という言葉には、

  • 目が疲れる
  • かすんで見える
  • ピントを合わせにくく感じる
  • 頭痛や目の不快感が出る
  • 遠くが見えにくくなる近視が生じる

など、異なる現象が含まれています。

米国国立眼研究所(NEI)は、近視を眼球の形などによって光が網膜より手前に焦点を結び、遠くがぼやけて見える屈折異常と説明しています。

一方、visual fatigue(視覚疲労)は、画面や細かな文字を見る作業によって生じる疲れや不快感などを指します。

「暗い場所で目が疲れた」という体感と、「近視が進んだ」という長期的な変化は別のものとして考える必要があります。

一時的なかすみと長期的な近視も分けて考える

暗い場所で細かな文字や画面を長く見たあと、「見えにくい」「ピントが合いづらい」と感じることがあります。

照明条件を変えた短時間の実験が直接示しているのは、視覚疲労や見え方の変化です。長期的な近視の進行とは、別の現象として扱う必要があります。

暗い部屋で本やスマホを見ると近視になるのか

暗さそのものと近視の因果関係はまだ十分に分かっていない

今回調べた範囲では、

暗い部屋で読書やスマホをする
↓
その暗さ自体によって近視が発症・進行する

という因果関係を直接確かめた強い証拠は十分ではありません。

現在の研究では、光環境だけでなく、屋外時間や近見作業、画面時間など複数の要因が扱われています。

そのため現時点で言えるのは、暗い環境と近視について研究はあるものの、「暗い部屋で見ること自体」の影響を単独で切り分けるには証拠が不足しているということです。

子どもでは薄暗い環境と近視の関連を示した研究もある

2018年の研究では、オーストラリアの子どもを対象にウェアラブル光センサーで日常の光曝露を測定し、近視児と非近視児を比較しました。

1~30 luxの「mesopic light」にいる時間など、光の強さごとの曝露時間に違いがみられ、近視が強いほどmesopic lightで過ごす時間が長いという相関も報告されています。

ただし、直接示しているのは「薄暗い環境で過ごす時間と近視との関連」です。屋外時間や近見作業など別の要因も関係し得るため、因果関係まではこの研究だけでは確定しません。

また、「1~30 lux」は研究上の分類です。近視リスクの境界や安全ラインを示す数値ではありません。

暗い部屋では目が疲れやすくなるのか

暗い環境での視作業は負担になり得る

2020年のタブレット読書実験では、低照度環境で1時間読書させ、周囲と画面の明るさの比を変えて視認性や疲労を調べています。

その結果、周囲と画面の輝度差が大きい条件では、読みづらさや視覚疲労が大きくなる傾向が確認されました。

つまり、暗さだけでなく、「暗い周囲に対して画面だけが明るい」といった輝度差も、視覚的な負担に関係する可能性があります。

ただし、これは比較的小規模な短時間の実験です。研究が直接扱っているのは特定条件での視覚疲労であり、「○lux以下なら疲れる」といった実用的な境界を示したものではありません。

目が疲れたことは近視が進んだ証拠ではない

暗い部屋でスマホを見て、目の重さ、かすみ、ピントの合わせにくさなどを感じることがあります。

こうした症状と、近視の進行は別の指標です。

視覚疲労の研究では短時間の不快感や見え方を、近視研究では屈折状態などの長期的な変化を調べています。

スマホや画面時間と近視はどう関係するのか

画面時間が長いほど近視と関連する研究はある

2025年のシステマティックレビュー・用量反応メタ分析では、45研究、33万5524人が解析されました。参加者の平均年齢は9.3歳でした。

この研究では、デジタル画面を見る時間が長いほど、近視であることや近視の進行などと関連する傾向がみられました。

ただし、研究には横断研究が多く含まれ、研究全体のエビデンス確実性も低いと評価されています。

さらに、近視の「新規発症」だけに限定した解析では、統計的に明確な関連はみられませんでした。

そのため、この研究から比較的直接言えるのは、画面時間が長いことと近視との間に関連がみられるというところまでです。

「画面時間」と「暗い部屋」は分けて考える

画面時間と近視の関連には、

  • 近距離で見る時間
  • 連続して近くを見る時間
  • 屋外で過ごす時間の減少
  • その他の生活習慣
  • 画面を使う環境

など複数の要因が関係し得ます。

2025年のメタ分析でも、多くの研究が観察研究であり、屋外時間などの交絡要因が残る点が限界として挙げられています。

そのため、画面時間との関連から直接分かるのは画面使用時間と近視との関係までで、「スマホの光」や「暗い部屋で使うこと」の影響は別に検証する必要があります。

部屋を明るくすれば近視予防になるのか

屋外時間と近視の関係は比較的よく調べられている

2015年の中国の学校を対象としたランダム化比較試験では、6歳前後の子どもに学校で1日40分の屋外活動を追加したところ、3年間の近視発症率は介入群30.4%、対照群39.5%でした。

2022年の6295人を対象とした学校ベースの試験でも、屋外時間を増やした群で近視発症が少なく、屈折値や眼軸長の変化にも差が確認されています。

NEIも、子どもでは屋外で過ごす時間と近視リスクとの関係について案内しています。

室内照明の明るさは、屋外時間とは別の問い

「屋外で過ごすこと」と「室内照明を明るくすること」は、同じ介入ではありません。

屋外環境には、光の強さやスペクトル、見る距離、近見作業の減少、活動内容など複数の要素があります。

屋外活動の研究から直接言えるのは、子どもの屋外時間を増やす介入によって近視発症が少なくなった研究があるということです。

室内照明の明るさだけで同じ効果が得られるかは、別に検証する必要があります。

また、「何lux以上なら近視を防げる」「何時間まで暗い部屋にいても安全」といった具体的な境界を示す証拠は、今回確認した範囲では得られていません。

結局どうなの? 暗い部屋では目は疲れやすいが、近視との因果関係はまだはっきりしない

暗い部屋で本やスマホを見ること自体と近視の進行との因果関係は、現時点の証拠ではまだ十分に確立していません。

一方、照明条件や周囲と画面の明るさの差によって、読みにくさや視覚疲労が変わることは実験研究で確認されています。

つまり、「暗い場所で見ると目が疲れること」と「その環境によって近視が進むこと」は別の問題です。

子どもでは、画面時間、近見作業、屋外時間、光環境などと近視との関係が研究されています。ただし、それぞれの要因を切り分けたときの「暗い部屋」の影響については、まだ不確実性が残ります。

したがって現時点では、暗い場所で見ることについては「近視になる」と必要以上に恐れるより、近視と目の疲れを分けて考えるのが妥当です。照明環境を整えることには、少なくとも見やすさや視覚的な負担を減らすという意味があります。

近視について「○lux以上なら安全」「○時間までなら問題ない」といった具体的な安全ラインは、現在の証拠からは示せません。

参考資料

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