ランク戦で連敗したらやめるべき? 研究から考える合理的なやめどき

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ランク戦で2連敗、3連敗と負けが続いたとき、そのままプレイするべきか。それとも、今日はもうやめた方がいいのか。

「2連敗したら終了」というルールもあれば、負けていても続けることが練習になるという考え方もあります。

実際のゲームデータを調べると、連敗中はその後のパフォーマンスも悪くなる傾向が見られます。ただし、その関連は小さく、何連敗したら終了すべきかという科学的な基準は確立されていません。

連敗数だけで、一律にランク戦を終了すべきだとする科学的根拠は、今回確認できませんでした。

では、負けが込んでいるとき、何を基準に続行・休憩・終了を判断すればよいのでしょうか。

ゲームの大規模データやeスポーツの疲労研究、技能学習の研究をもとに考えます。

2連敗・3連敗でやめる科学的根拠はあるのか

約60万試合のLoL研究で分かったこと

2024年、Dengらは『League of Legends』(LoL)の上位プレイヤーによる597,680試合を分析し、連勝・連敗とパフォーマンスの関係を調べました。

その結果、連勝中は良いパフォーマンス、連敗中は悪いパフォーマンスと関連していました。

ただし、関連の大きさは小さいものでした。

また、この研究は実際の試合データを分析した観察研究です。「負けたこと自体が、次の試合のパフォーマンスを悪化させる」と証明したわけではありません。

例えば、疲労や集中力の低下によってプレイが悪くなり、その結果として連敗している可能性もあります。

研究では、連勝中のプレイヤーは同じチャンピオンやレーンを維持しやすく、連敗中は変更しやすい傾向も見られました。チャンピオンやレーンを一貫して使用することも、良いパフォーマンスと関連していました。

つまり、連敗と成績低下には関係があるものの、何が原因なのかは単純ではありません。

「2連敗すると能力が落ちる」「3連敗したら次の試合は不利になる」といった固定的な判断を、この研究から導くことはできません。

連敗数とは別に、連続プレイの長さも関係する

2023年、PfauらはLoLプレイヤー5,000人のデータを分析し、連続して試合を重ねた場合のパフォーマンスを調べました。

その結果、連続試合数が増えるにつれて個人のパフォーマンス指標が低下し、勝率にも低下が見られました。

ただし、こちらも観察研究であり、疲労だけが原因だと断定することはできません。

それでも、連敗数だけでは見落とす情報があることは分かります。

例えば、2試合プレイして2連敗した人と、10試合以上続けた末に2連敗した人では、プレイの状況が異なります。

逆に、連勝中であっても、長時間プレイによる影響がなくなるわけではありません。

「何回負けたか」と「どれだけ続けているか」は、別々に確認する価値があります。

疲労やtiltは、プレイにどう影響するのか

連敗以外の判断材料として考えられるのが、疲労や感情状態です。

ただし、単に「疲れている」「イライラしている」という感覚だけで、実際のプレイ能力を正確に判断できるとは限りません。

長時間プレイすると、反応は速くても正確性が落ちる場合がある

2020年、Sousaらは17人のeスポーツ選手を対象に、約2時間半のゲームプレイ前後で認知機能を測定しました。

参加者はOverwatchプレイヤー9人とLoLプレイヤー8人です。

プレイ後、ストループ課題と呼ばれる認知テストでは、反応が速くなる一方で誤答が増え、正確性が低下しました。

ストループ課題は、不要な反応を抑えて正しく答える能力などを評価するテストです。

つまり、長時間プレイ後に認知機能が一律に低下したわけではありません。

反応速度が上がっても、正確性は落ちる場合があるという結果でした。

この研究ではゲーム内の判断ミスや勝率を直接測定していないため、同じ変化がランク戦で起こるとは断定できません。

しかし、「まだ素早く反応できるから、調子は落ちていない」と判断することには注意が必要そうです。

自分では疲れていないつもりでも、認知機能は低下し得る

2024年、Matsuiらはサッカーゲームを用いた3時間のeスポーツ実験を実施しました。

参加者は、経験の少ないプレイヤーと経験豊富なプレイヤーです。

その結果、2時間経過した時点で認知課題の成績低下が見られましたが、主観的な疲労感はまだ明確に増えていませんでした。

疲労感が増加したのは3時間経過後でした。

この研究は、本人の疲労感と、実際の認知機能の変化が必ずしも一致しないことを示しています。

ただし、対象はサッカーゲームです。また、実験で変化が見られた2時間という数値が、ランク戦の中止基準になるわけではありません。

重要なのは、疲労の自覚だけで判断すると、認知機能の変化を見逃す場合があるという点です。

tiltは連敗や疲労と同じではない

ゲームでいう「tilt」は、怒りやフラストレーションなどによって感情やプレイが乱れる状態です。

2021年、Wuらは高校生のLoL競技プレイヤー95人を対象に、tiltの原因や反応を調査しました。

プレイヤーは相手よりも味方の行動をtiltの原因として挙げることが多く、反応にも個人差がありました。

ここで分けて考えたいのは、連敗、認知疲労、tiltは同じ現象ではないということです。

負けていても冷静な場合はありますし、勝っていても味方への苛立ちによってプレイが乱れる場合は考えられます。

また、感情が落ち着いていても、認知機能が低下している可能性があります。

そのため、連敗数だけでプレイヤーの状態を判断することには限界があります。

負けていても、続ければ練習になるのか

ここまでの研究を見ると、疲労や成績低下があるときは、プレイを終了した方がよさそうにも思えます。

しかし、上達を目的にしている場合は、別の問題があります。

それは、その場のパフォーマンスと、長期的な学習は同じではないということです。

疲れて成績が落ちても、学習まで失われるとは限らない

2026年の『Journal of Motor Behavior』に掲載された研究では、92人を精神疲労群と対照群に分け、視覚運動課題を練習させました。

精神疲労群は、練習前に30分間のストループ課題を実施しています。

その結果、精神疲労群では練習中の運動パフォーマンスが悪化しました。

ところが、翌日以降に測定した運動学習には、精神疲労による明確な悪影響が確認されませんでした。

つまり、この実験では疲労によってその場の成績が悪くなっても、学習そのものが損なわれたとは言えない結果になりました。

ただし、研究対象は実験室の視覚運動課題です。FPSやMOBAの複雑な技能にも同じことが起こるとは限りません。

それでも、この研究は一つの重要な区別を示しています。

「今日のプレイが悪かった」ことと、「今日の練習が無意味だった」ことは同義ではありません。

練習中の成績が良くても、長期的な上達とは限らない

2019年、Johansonらは『Super Hexagon』に似たゲームを使い、休憩なしと、2分・5分・10分・1日の間隔を設ける練習を比較しました。

その結果、休憩を挟んだグループでは、特に初心者で練習中のパフォーマンスが大きく向上しました。

一方、1日後の保持テストでは、各グループの成績は似た水準になりました。

練習中に大きく伸びたことが、そのまま翌日の優位性につながったわけではありません。

ランク戦でも、その日の勝率だけでは練習の価値を判断しきれない可能性があります。

例えば、新しい戦術や苦手な状況への対応を練習しているなら、一時的な勝敗と長期的な技能の変化が一致しない場合も考えられるでしょう。

これは運動学習・ゲーム技能研究からの解釈であり、連敗中のランク戦を続ける方が上達すると直接証明されたわけではありません。

負けていても学習できる可能性はある。しかし、それを理由に疲れた状態でランク戦を続けるべきだとは言えません。

では、ランク戦のやめどきはどう判断する?

ここまでの研究から分かるのは、連敗数だけではプレイ状態も練習の価値も十分には判断できないということです。

では、実際にはどうすればよいのでしょうか。

現時点で、勝敗・プレイ時間・疲労・感情状態などを比較し、最適な中止基準を決めた十分な直接研究は確認できませんでした。

そのため、以下は科学的に検証済みの停止ルールではなく、研究結果を踏まえて実用的に考えられる判断方法です。

連敗しているだけなら、機械的に終了する必要はない

2連敗や3連敗は、それだけで能力が一定水準以下に落ちたことを示す数字ではありません。

例えば、まだプレイ時間が短く、感情も安定しており、普段と大きく変わらない判断ができているなら、続行を検討する余地があります。

ただし、調子の良し悪しを本人が完全に把握できるわけではないため、連続プレイの長さも考慮した方がよいでしょう。

判断や感情に乱れがあるなら、一度区切る

次のような状態が続いているときは、勝敗とは別に休憩や終了を検討する理由になります。

  • 状況を十分に確認せず、同じ判断ミスを繰り返している
  • 焦りや苛立ちによって、普段とは違う行動が増えている
  • 負けを取り返すことが目的になり、予定より長くプレイしている

これらは実用的な観察項目であり、研究によって精度が検証された中止判定法ではありません。

ただ、連敗数だけで続行を決めるよりも、自分の状態を振り返る材料にはなります。

なお、2024年のLoL研究では、連敗後に長めの休憩を取ることと、その後のわずかなパフォーマンス改善に関連が見られました。

ただし、休憩そのものが改善の原因だったとは断定できず、最適な休憩時間も分かっていません。

レートを上げたいのか、上達したいのかを分ける

ランク戦には、現在のレートを上げる目的と、技能を向上させる目的があります。

レートを上げることを優先するなら、その場のパフォーマンスが悪い状態で無理に試合を重ねる理由は小さくなります。

一方、上達を目的にするなら、その日の勝敗だけで練習の価値を判断する必要はありません。

ただし、練習したいからといって、必ずランク戦を続ける必要もありません。

疲労や感情の乱れが気になるなら、ランク戦を終了してリプレイを確認したり、別の練習に切り替えたりする選択肢もあります。

ランク戦を終了することと、その日の練習をすべて終えることは別です。

この使い分けによって上達速度がどれだけ変わるかは直接検証されていませんが、レートと技能学習という異なる目的を整理する方法にはなります。

「2連敗したら終了」は無意味なのか

科学的に最適な連敗数が分かっていないからといって、個人で決めたルールが無意味になるわけではありません。

例えば、負けを取り返そうとして予定より長くプレイしてしまう人なら、「2連敗したら終了」はプレイ量を管理するためのルールとして使えます。

同様に、一定の試合数で区切る、時間で区切るといった方法も考えられます。

大切なのは、そのルールの位置づけです。

「2連敗したら終了」は、科学的に最適なやめどきではなく、自分のプレイを管理するためのルールです。

本人の目的に合っているなら採用する理由はありますが、全員が従うべき基準ではありません。

結局どうなの?

ランク戦は、連敗数だけで一律に終了する必要はありません。続けるか迷ったら、負けた回数だけでなく、プレイ時間、判断や感情の状態、そして何を目的にプレイしているのかを確認するのが合理的です。

ゲームの大規模研究では、連敗とその後のパフォーマンス低下に小さな関連が見られました。また、長い連続プレイによる成績低下や、自覚しにくい認知機能の変化も報告されています。

一方、短期的な成績と長期的な学習は別であり、負けている日の練習が無意味だと決めつける根拠もありません。

実際の判断としては、次のように整理できます。

  • 連敗しているだけなら: 回数だけで終了せず、現在の状態や連続プレイの長さも確認する。
  • 判断や感情に乱れがあるなら: 無理に次の試合へ進まず、休憩や終了を検討する。
  • 上達が目的なら: その日の勝敗だけで練習を評価せず、必要に応じてランク戦以外の練習へ切り替える。

これらは研究を踏まえた実用的な判断であり、勝率や上達速度を改善することが直接証明された手順ではありません。

また、「2連敗したら終了」という固定ルールも、本人にとって無理な連続プレイを防ぐ手段になるなら、十分に採用を検討できます。

結論は、「何連敗したか」だけで次の試合を決めるのではなく、「今の状態で続ける理由があるか」を考えること。

ただし、疲労やtiltの程度をどう測り、どの時点で休憩・終了すれば最も上達につながるのかについては、まだ十分な直接研究がありません。

連敗数は判断材料の一つにはなりますが、それだけで今日の調子も、練習の価値も決まるわけではありません。

参考資料

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