ゲーム中に考えすぎると下手になる?「操作」と「判断」は別問題

ゲーム・PC

ゲームが上手くなるためには、自分の操作や判断を振り返り、改善することが大切です。

しかし、練習中に意識していたことを、試合中も細かく考え続ける必要はあるのでしょうか。

スポーツの研究では、すでに身についた動作を実行中に意識しすぎると、かえって成績が悪くなる場合があると確認されています。

一方で、FPSやMOBAでは、敵の位置を予測したり、味方の動きに合わせたりする判断も欠かせません。

つまり、「操作を意識すること」と「戦況を考えること」は別の問題です。

今回は、ゲーム中に考えすぎると本当に下手になるのか、研究から検証します。

ゲーム中の「考えすぎ」には違いがある

例えば、FPSのエイム練習では、照準の動かし方や操作の癖を意識して確認することがあります。

一方、実際の試合では、敵の位置、相手の動き、遮蔽物、味方との距離など、さまざまな情報をもとに行動を判断しなければなりません。

ここには、異なる2種類の注意があります。

① 操作そのものへの注意

自分のエイムやキー操作がどのように行われているか、動作の細部を意識することです。

新しい操作を習得するときには、こうした注意が役立つ場合があります。

しかし、すでに自然にできる操作を実戦中に細かく監視し直すと、かえって動作を妨げる可能性があります。

② 戦況や次の行動への注意

敵がどこにいるか、味方と連携できるか、今は攻めるべきか、引くべきか。

こうした状況を把握し、次の行動を選ぶための注意です。

どちらも頭を使うことですが、考えている対象が違います。

研究で悪影響が確認されているのは、主に習熟した動作そのものへ注意を向けすぎる場合です。

では、実際にどのような結果が出ているのでしょうか。

慣れた操作を意識すると、本当に下手になるのか?

スポーツの実験では、実際に成績が悪化した

2002年、Beilockらは、ゴルフやサッカーを使って、動作への注意がパフォーマンスに与える影響を調べました。

ゴルフの実験では、経験豊富な選手が自分のパッティング動作を細かく意識する条件と、別の課題に注意を分ける条件を比較しました。

すると、別の課題に注意を分けた条件の方が、正確にパットできました。

2004年のGrayによるシミュレーション野球の実験でも、熟練者がバットの動き方へ注意を向けると、打撃の誤差や動作のばらつきが増えました。

これらの結果は、十分に身についた動作を、実行中にあえて細かく監視すると、成績が悪くなる場合があることを示しています。

ただし、「ほかのことを考えながらプレイした方がよい」という意味ではありません。研究では、動作への注意を変化させるために別の課題が使われています。

FPSのエイムや格闘ゲームのコンボにも、繰り返し練習することで身につく操作があります。そのため、似た現象が起こる可能性は考えられます。

なお、操作への意識がFPSやMOBAの成績にどの程度影響するかは、まだ十分に検証されていません。ここで紹介した結果は、主にスポーツ研究に基づくものです。

慣れていない操作では、逆の結果も出た

先ほどの2002年の研究では、サッカーのドリブルも調べています。

経験豊富な選手が、使い慣れた利き足でドリブルするときは、動作から注意をそらす条件の方が良好でした。

ところが、同じ選手でも、慣れていない非利き足を使うと結果が逆になりました。

慣れていない動作では、むしろ動かし方を意識した方が良かったのです。

初心者にも同様の傾向が見られました。

つまり、考えた方がよいかどうかは、単純に初心者か上級者かだけでは決まりません。

今行っている操作が、どれだけ身についているかによって結果が変わるのです。

ゲームでも、使い慣れたキャラクターの操作と、新しく練習しているキャラクターの操作では、意識すべきことが違う可能性があります。

新しい操作を覚える段階では、動かし方を確かめる必要があります。一方、十分に慣れた操作では、その手順を毎回確認し直す必要性は低くなると考えられます。

では、ゲーム中は何も考えない方がいい?

いいえ。戦況を考えることと、操作を細かく意識することは別です。

実際、ゲームを対象にした研究でも、考えることが一律に悪いという結果にはなっていません。

2023年、Trotterらは、CS:GOの競技者53人を対象に、自己調整能力とパフォーマンスの関係を調べました。

自己調整とは、目標を設定したり、自分の行動を管理したり、状況に応じて調整したりする能力です。

この研究では、自己調整能力の高さが、射撃精度などの良い成績と関連していました。

また、2026年には、セミプロのLeague of Legends(LoL)選手4人が、試合中にどのような思考をしているのかを調べた研究も発表されました。

選手たちはプレイ中にも、目標を設定したり、戦略を考えたり、注意や感情を調整したりしていました。

これらは少人数の研究や、能力と成績の関連を調べた研究です。「考えれば考えるほど上手くなる」と証明したものではありません。

しかし、上手いプレイヤーは何も考えずにプレイしている、という説明も適切ではありません。

FPSなら、敵の位置を予測したり、味方と攻めるタイミングを合わせたり、相手のスキルを把握したりする必要があります。

こうした判断まで減らせば上手くなる、という証拠はありません。

では、試合中は何を意識すればいい?

ここまでの研究を踏まえると、すでに身についた操作を必要以上に細かく監視せず、敵の動きや味方の状況など、試合中の判断に必要な情報へ注意を向けるという考え方ができます。

例えばFPSでは、エイムそのものの感覚ばかりを気にするのではなく、相手の動きや位置関係、味方から援護を受けられる状況かどうかなどに注意を向けることです。

一方、まだ身についていない操作については、試合中でも意識的な確認が役立つ場合があります。

つまり、「操作については絶対に考えない」というルールにする必要はありません。

これはスポーツの実験結果とゲーム研究を踏まえた実用的な解釈であり、FPSやMOBAで最適な方法として直接証明されたわけではありません。

結局どうなの?

ゲーム中に考えすぎると、かえって下手になる場合はあります。

ただし、問題になるのは「考えること全部」ではありません。

スポーツの研究で悪影響が確認されているのは、主に十分に身についた動作を、実行中に細かく監視・制御し直すことです。

一方で、敵の位置を予測したり、味方と連携したり、次の行動を判断したりすることまで減らす根拠はありません。

今回の証拠を踏まえると、次のように整理するのが合理的です。

身についた操作は必要以上に考え直さず、戦況の判断には頭を使う。まだ身についていない技能は、意識して練習する。

目指すべきなのは「何も考えずにプレイすること」ではなく、考える必要があることと、考え直さなくてもできることを区別することです。

参考資料

  1. Beilock et al. (2002). When Paying Attention Becomes Counterproductive. Journal of Experimental Psychology: Applied. DOI: 10.1037/1076-898X.8.1.6
  2. Gray (2004). Attending to the Execution of a Complex Sensorimotor Skill. Journal of Experimental Psychology: Applied. DOI: 10.1037/1076-898X.10.1.42
  3. Trotter et al. (2023). Self-regulation, Stress Appraisal, and Esport Action Performance. Frontiers in Psychology. DOI: 10.3389/fpsyg.2023.1265778
  4. Swettenham et al. (2026). LoL選手の試合中の自己調整過程を調べた研究。International Journal of Sport and Exercise Psychology. DOI: 10.1080/1612197X.2026.2715996

コメント

タイトルとURLをコピーしました