FPSのランク戦前、ウォーミングアップは何分必要?短時間で十分なのか

ゲーム・PC

FPSのランク戦に入る前、エイム練習を何分すればよいのでしょうか。

5分程度で切り上げてもよいのか。それとも、20〜30分ほど練習してから始めた方がよいのか。

結論から言うと、FPSのランク戦前に必要なウォーミングアップの最適時間は、科学的にはまだ確立していません。

ただし、FPS型のエイム課題では、その日の最初の数試行で成績が急速に向上する現象が確認されています。

一方、エイム練習で成績が上がることと、その後の実戦で強くなることは別問題です。

現在の研究から、どこまで判断できるのでしょうか。

最初の数試行でエイム成績が上がる

2021年、ListmanらはAim Labの「Gridshot」を使い、7,174人、約68万回のプレイデータを分析しました。

Gridshotは、画面上に現れるターゲットを素早く正確に撃つエイム練習課題です。

研究では長期的な上達だけでなく、1日の練習中に成績がどのように変化するかも調べられています。

その結果、各日の最初の数試行で、1秒当たりの命中数が急速に増加する現象が観察されました。

研究者らはこれを「ウォームアップ効果」と呼び、ゲーム内のマウス操作への再適応などが関係している可能性を指摘しています。

つまり、練習開始直後と数回プレイした後では、同じプレイヤーでもエイム課題の成績が異なることがあります。

ただし、これはプレイヤーが自発的に練習したデータを分析した観察研究です。ウォーミングアップの有無を比較した実験ではありません。

また、測定したのはGridshotの成績であり、VALORANTやOverwatch 2などのランク戦で勝率が上がることを確認したわけでもありません。

この研究は、ランク前に少し操作しておく理由にはなりますが、実戦での効果までは示していません。

研究で使われた「10分」は最適時間ではない

では、具体的に何分必要なのでしょうか。

2024年、RogersらがFPSプレイヤー24人を対象に行った研究では、実験前にKovaaK’sというエイムトレーナーで10分間のウォーミングアップを実施しています。

参加者は2種類の射撃課題をそれぞれ5回行い、5分間の休憩を挟んで測定を開始しました。

研究者らは、先ほどのAim Lab研究で最初の数試行に急速な改善が見られたことを、ウォーミングアップの採用理由に挙げています。

しかし、この研究は10分が最適だと証明したものではありません。

研究の目的はカフェインが射撃成績や反応時間に与える影響を調べることであり、ウォーミングアップ時間の比較ではなかったためです。

5分でも同じ結果になったのか、20分ならさらに良かったのかは分かりません。

今回確認できた研究を、時間別に整理すると次のようになります。

時間 研究から分かること
0分 ウォーミングアップなしと実施ありのランク戦成績を直接比較した証拠は確認できない
5分 最適時間として直接検証されていない
10分 FPS研究で事前準備に採用されたが、最適性は未検証
20〜30分 短時間の準備より実戦成績が良くなるかは不明

なお、Listmanらの研究では、約30分の練習で長期的な学習効果の大部分が得られると推定されています。

しかし、これは主に練習を重ねることで将来の能力が向上するという話です。

長期的な上達のための練習時間と、今日のランク戦に入る直前の準備時間は別です。

「30分の練習に学習効果がある」という結果から、「ランク前も30分ウォーミングアップした方がよい」とは結論づけられません。

エイム練習での改善は実戦にもつながる?

ここまで紹介したListmanらの研究で確認できたのは、エイム練習を繰り返すうちに、その練習課題の成績が上がる現象です。

Rogersらの研究では10分間のウォーミングアップが採用されていますが、その効果自体を比較したわけではありません。

しかし、ランク戦前にウォーミングアップをする目的は、エイム練習で高得点を出すことではなく、その後の実戦で良いパフォーマンスを発揮することです。

エイム練習中の成績が上がっても、実戦の成績まで良くなるとは限りません。

そこで、ウォーミングアップ後のFPS課題の成績を比較した研究を見ていきます。

CS:GOでは身体運動による改善が確認された

2024年、Dos Santosらは経験豊富なCS:GOプレイヤー20人を対象に、ウォーミングアップ方法の違いを調べました。

比較したのは、休息、身体運動、Aim Labを用いた認知的ウォーミングアップ、そして身体運動と認知課題を組み合わせた条件です。

その後、参加者にCS:GOの専用課題を行わせ、完了までの時間と、標的を倒すまでに必要な発射弾数を測定しました。

結果は、方法によって異なりました。

身体運動のみの条件では、他の条件と比較して課題完了時間が有意に短縮しました。

一方、休息条件と比較した射撃精度には有意な改善が確認されていません。

また、Aim Labを用いた認知的ウォーミングアップ単独や、身体運動との組み合わせでも、同様の成績改善は確認されませんでした。

つまり、この実験では、Aim Labを使った準備よりも身体運動の方が、その後のCS:GO課題に良い結果をもたらしました。

ただし、対象は20人であり、検証されたのは特定のウォーミングアップ方法とCS:GO課題です。あらゆるエイム練習が無意味だと証明したものではありません。

実際の5対5の試合やランク戦の勝率も測定していません。

身体運動の研究から何が分かるか

身体を動かすことについては、ほかにもeスポーツ関連の研究があります。

2026年に発表されたWachholzらのシステマティックレビューでは、身体運動がeスポーツのパフォーマンスに与える影響を調べた12件の実験研究が整理されました。

短時間の身体運動によって、反応時間や注意・判断に関わる能力、一部のゲーム課題成績などが改善した研究が報告されています。

ただし、対象ゲームや運動方法、測定項目はさまざまです。

運動時間と改善の大きさの間にも、一貫した関係は確認されていません。

身体運動はランク前の準備方法として検討する価値がありますが、「何分運動すればFPSで最も強くなるのか」という答えはまだ出ていません。

ランク戦前は何分やる?現実的な決め方

最適時間が分からない以上、全員に同じ分数を指定する科学的な根拠はありません。

それでも、ランク戦をプレイする際には、どこかで準備を切り上げる必要があります。

実用上の方法としては、5〜10分程度を仮の準備時間に設定することが考えられます。ただし、これは研究で証明された最適範囲ではありません。

Aim Labで最初の数試行に成績の立ち上がりが見られたことや、FPS研究で10分の事前準備が採用されたことを参考にした運用例です。

5分という下限にも、効果を保証する根拠はありません。

実際には、普段使っている感度やゲーム内の操作を短時間確認し、通常の操作感に戻ったところで切り上げる、といった方法が考えられます。

ただし、操作感が戻ることと、実戦での準備が完了することが一致するかは検証されていません。あくまで主観的な判断材料です。

ここでは、目的を分けると整理しやすくなります。

  • ウォーミングアップが目的なら: 短く操作を確認し、長く続ける明確な理由がなければランク戦に移る。
  • エイムそのものの上達が目的なら: 長期的な練習として、別に時間を確保する。

20〜30分のウォーミングアップが5〜10分より優れているという直接的な証拠は、今回確認した研究にはありません。

反対に、20分以上行うと必ずパフォーマンスが低下するという根拠もありません。

準備時間を長くすること自体が悪いのではなく、何を目的に続けているのかが問題です。

結局どうなの?

FPSのランク戦前に、20分や30分のウォーミングアップが必要だとする科学的根拠は、今回確認できませんでした。最適な時間もまだ決まっていません。

一方、Aim Labでは最初の数試行で成績が急速に向上する現象が確認されています。短時間の準備を試す理由はありますが、それによってランク戦の勝率が上がるかは未確認です。

実用上は、5〜10分程度を仮の目安にする方法があります。ただし、これは効果が証明された推奨時間ではありません。

長時間のエイム練習が将来の上達に役立つことと、ランク戦の直前に長時間の準備が必要であることは別問題です。

ウォーミングアップとトレーニングを混同せず、根拠のない固定時間にこだわらない。

現在の研究から導けるのは、そのような判断です。


参考資料

  1. Listman, J. B., et al. (2021). Long-Term Motor Learning in the “Wild” With High Volume Video Game Data. Frontiers in Human Neuroscience, 15, 777779. DOI: 10.3389/fnhum.2021.777779
  2. Rogers, E. J., et al. (2024). Caffeine improves the shooting performance and reaction time of first-person shooter esports players: a dose-response study. Frontiers in Sports and Active Living, 6, 1437700. DOI: 10.3389/fspor.2024.1437700
  3. Dos Santos, J., et al. (2024). Physical and/or cognitive warm-up effects on first-person shooter video-games performances. Entertainment Computing, 49, 100618. DOI: 10.1016/j.entcom.2023.100618
  4. Wachholz, F., et al. (2026). Effects of Acute and Chronic Physical Exercise on Esports Performance: A Systematic Review. Sports Medicine – Open, 12, 56. DOI: 10.1186/s40798-026-01034-9

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