家のクモは残しておくべき?害虫を食べる効果はどこまで期待できるのか

生活・健康

家の中でクモを見つけたとき、「害虫を食べてくれるから、そのままにしておいた方がいい」と聞いたことがある人は多いと思います。

特にアシダカグモは、ゴキブリを食べる「益虫」としてよく紹介されています。

でも、ここで少し疑問が残ります。

クモがゴキブリやハエを食べることと、家の中の害虫を実際に減らしてくれることは、本当に同じなのでしょうか。

調べてみると、家のクモが害虫を食べていること自体は、かなり確かです。

ただし、クモを残しておけば家庭内の害虫が目に見えて減る、というところまではよく分かっていません。

では、家でクモを見つけたとき、残しておく意味はどのくらいあるのでしょうか。

家のクモは、本当に害虫を食べている?

まず、「クモは害虫を食べる」という話そのものは、単なる俗説ではありません。

日本の家屋内にいるクモを調べた研究では、ゴキブリ、ハエ類、ユスリカ類などが実際に捕食されていることが観察されています。

特に有名なアシダカグモについても、家の中でゴキブリを捕食する様子が確認されています。

つまり、

「アシダカグモはゴキブリを食べる」

という部分については、かなり素直に「本当」と考えてよさそうです。

小型のクモも役割があります。

ハエトリグモ類などはハエのような小さな昆虫を捕食しますし、網を張るタイプのクモには小型の飛翔昆虫が捕まります。

少なくとも、家の中にいるクモが何もせずに居座っているわけではありません。

害虫を食べるなら、家の害虫も減らしてくれる?

ここが今回調べていて一番重要だったところです。

「害虫を食べる」ことと、「家の害虫を実用上意味のあるほど減らす」ことは別です。

たとえばクモがゴキブリを1匹食べれば、その1匹は確実に減ります。

しかし、家の中ではゴキブリも繁殖します。隙間に隠れたり、クモと遭遇しない場所で活動したりもします。

そのため、

クモが害虫を捕食する

↓

家全体の害虫の増加が抑えられる

↓

人が「害虫が減った」と感じる

↓

害虫対策として実用になる

という段階は、それぞれ分けて考える必要があります。

今回確認できた研究では、最初の「実際に捕食している」という段階はかなり明確でした。

一方で、

クモがいる家といない家を比べて、ゴキブリやハエが何%減ったのか

といった家庭単位の直接的なデータは確認できませんでした。

クモを家から除去すると害虫がどれだけ増えるのか、逆にクモを入れるとどれだけ減るのか、といった実験も十分には見当たりません。

つまり、現時点では、

クモが個々の害虫を減らしているのは確か。
でも、家全体の害虫をどのくらい減らしているのかは分からない。

というのが一番正確です。

農業では、クモによって害虫の増加が遅くなった実験があります。

ただ、その効果も条件によって変わり、害虫が増えた後まで完全に抑え込めるとは限りませんでした。

家のゴキブリにそのまま当てはめることはできませんが、「クモが虫を食べるから、それだけで害虫問題を解決できる」とは限らないことは分かります。

クモによって、期待できる効果は違う?

「家のクモ」と一括りにするのも少し雑です。

クモによって、捕まえやすい獲物が違います。

大型で地面や壁を歩き回るクモと、小型のハエトリグモ、網を張るクモでは、狩りの方法も活動範囲も違います。

そのため、

「クモがいる=あらゆる害虫を減らしてくれる」

とは考えない方がよさそうです。

アシダカグモはゴキブリ対策になる?

アシダカグモについては、ゴキブリを捕食する能力そのものはかなりはっきりしています。

ただし、それは「家に置いておけばゴキブリがどんどん減る」という意味ではありません。

普通の住宅では、ゴキブリは家具や壁の隙間に隠れますし、アシダカグモが毎日ゴキブリと遭遇するとは限りません。

逆に、ハエトリグモ類ではハエへの捕食能力が確認されている一方、同じようにゴキブリまでよく捕食するとは限りません。

結局、

「どのクモが、どの害虫に対して役立つのか」

まで分けて考えた方が実態に近いようです。

では、家のクモは残しておいた方がいい?

ここまで見ると、「害虫対策としては頼りないなら、クモを残しておく意味はないのでは?」とも思えます。

そこまで極端に考える必要もなさそうです。

すでに家にいるクモが無害な種類で、自分も特に気にならないのであれば、わざわざ追い出さずに残しておくことには一定の合理性があります。

少なくとも、家の中にいる虫を実際に捕食してくれるからです。

追加の費用も手間もかかりません。

ただし、

「残しておく意味がある」ことと、「残しておくべき」は同じではありません。

クモが苦手なら、無理をして同居する必要まではありません。

今回の調査では、クモを追い出すことで家庭内の害虫が大きく増えると断定できる証拠も確認できませんでした。

また、アシダカグモをわざわざ外から連れてきて家に放す、といった積極的な方法を勧められるほどの証拠もありません。

ゴキブリ対策なら、餌や水を残さない、侵入口を塞ぐ、粘着トラップで発生状況を確認する、必要に応じてベイト剤を使う、といった方法の方が対策としては確立しています。

クモはその代わりではなく、いても困らないなら補助的に働いてもらう存在くらいに考えるのがよさそうです。

結局、家のクモは残しておくべき?

今回調べた範囲では、こう考えるのが一番しっくりきます。

家のクモが害虫を食べているのは本当です。

アシダカグモがゴキブリを食べるのも、単なるネット上の噂ではありません。

ただし、

クモを残しておけば、家全体の害虫が目に見えて減る

とまで言える証拠はありません。

特に、クモがいる家といない家で害虫が何%違うのかという、一番知りたい部分は意外なほどよく分かっていません。

なので、

無害なクモで、自分が気にならないなら、わざわざ追い出す必要はなさそう。害虫を多少食べてくれる可能性があるからです。

でも、

「益虫だから絶対に残した方がいい」「クモを残せば害虫対策になる」とまでは言えない。

このくらいの距離感が、今ある研究には一番合っています。

クモは害虫駆除の主役ではなく、たまたま家にいるなら少し仕事をしてくれるかもしれない、補助的な捕食者と考えるのがよさそうです。

主な参考資料

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